病気やけがで入院した際、治療費や入院費がかかります。自分は健康だと思っていても、いつ病気になったり事故にあったりするかは分かりません。
そのような時のために入っておきたいのが医療保険です。
しかし、たくさんの保険商品が販売されており、どの商品が良いのか迷ってしまうこともあるでしょう。
今回は医療保険を選ぶ時のポイントや、年代別の選び方を詳しく紹介します。
医療保険を選ぶ前に、まず下記のポイントを確認していきましょう。
「公的医療保険」とは、医療費の一部を国が負担してくれる制度のことです。
公的医療保険には下記の3種類があります。
名称 | 内容 |
---|---|
被用者保険(健康保険) | 勤務先や組合等を通じて加入 |
国民健康保険 | 都道府県及び市区町村の自治体または国民健康保険組合を通じて加入 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上、または65歳以上75歳未満で所定の障害を持つ方が加入 |
公的医療保険では、年齢や所得等に応じて原則、1~3割の自己負担割合が設定されています。病気やけが等で治療を受けた際、自己負担分に相当する治療費を病院の窓口で加入者が支払う仕組みです。自治体によっては、子ども向けの医療費助成制度が充実しているところもあります。
病院等での治療を受けられる療養の給付の他にも、公的医療保険には以下のような様々な給付制度があります。ここでは一例を紹介します。
名称 | 内容 |
---|---|
高額療養費 | 同一月内に発生した医療費の自己負担額のうち、被保険者の年齢や所得を基に設定される自己負担限度額を超えた分が支給される。 |
入院時食事療養費 | 入院中に医療機関から提供される食事の費用のうち、一定額を超えた分が支給される。 被保険者の負担額は、原則として一食につき460円。ただし、住民税非課税世帯や指定難病患者などはさらに軽減される。 |
出産育児一時金 | 被保険者等が出産した場合に原則50万円が支給される。 ※妊娠週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度の対象とならない出産の場合は、支給額が48.8万円となる。 |
傷病手当金 | 被保険者が業務外の病気やけが等で働けなくなり、十分な収入が得られなくなった際に支給される。 支給期間は、同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6月を超えない期間。 (支給額は、加入者の過去12ヶ月間の報酬を元に算出) |
公的医療保険があるなら、わざわざ民間医療保険に入る必要があるのか、と思うかもしれません。しかし、公的医療保険と民間医療保険では保障内容が異なります。
民間医療保険は、公的医療保険ではカバーしきれない部分の医療費負担を補ってくれるので、民間医療保険の加入も検討すると良いでしょう。
民間医療保険は、公的医療保険と違い加入する義務があるものではありません。必要に応じて加入を検討し、自分に合った保険に入ることが重要です。
「自分に合った保険」というのは、ご自身のライフステージを見据えた保険です。病気やけがで入院・手術した場合に、必要な保障は何かを考えて選びましょう。
例えば、若い世代は年配の世代に比べて貯蓄が少ない人が多い傾向にあります。しかし、その分健康で病気のリスクも低いため、経済状況も踏まえて必要な保障を選ぶと良いでしょう。
ご自身の年齢や家族構成、経済状況等を加味して、今の自分に合った医療保険を選択しましょう。
「持病」とは慢性的に患っている病気のことです。「既往症」とは現在は完治していますが、以前患ったことのある病気のことをいいます。
持病や既往症があると、症状の悪化・再発の将来的なリスクにより、保険の引受を断られたり、保険料が高くなるなどの特別な条件が付く場合があるなど、民間医療保険に加入するハードルは高くなってしまいます。しかし、持病や既往症があっても加入できる民間医療保険はありますので、確認してみましょう。
実際に民間医療保険を選ぶ際には、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。下記の5つのポイントを参考に確認すると良いでしょう。
まず確認するべきは保障内容です。
医療保険には入院や手術、通院等の費用をカバーする様々な保障があります。その保険商品が何をカバーしているのか確認し、ご自身に必要かどうかを検討することが重要です。
保障内容として主に挙げられる2つの給付金に関して見ていきましょう。
入院給付金とは、病気やけがで入院した場合に受け取れるお金のことです。
商品によって、入院一日当たりの支給額である「入院給付金日額」や、保障される入院日数の限度である「支払限度日数」が変わってきます。
入院給付金は、入院日数に応じて保障される日額給付タイプが一般的です。また、日額給付タイプだけではなく、一時金給付タイプもあり、入院日数に左右されずに支出に備えることも可能です。
手術給付金とは、所定の手術を受けた場合に受け取れる給付金のことです。
手術給付金の算出方法は、各医療保険の約款で定められており、入院給付金日額に所定の倍率を掛けて算出するものが一般的です。また、算出の際に適用する倍率は、手術の種類に応じ変動するタイプや、手術の種類に関わらず固定されたタイプ、その他にも入院中か否かで倍率が異なるタイプ等もあります。
保険期間とは、保険契約による保障が継続する期間のことです。保険期間中に、支払条件に該当する入院や手術などが発生した場合には生命保険会社より給付金が支払われます。
医療保険は保険期間によって、大きく下記の2つのタイプに分かれます。
定期タイプは一定期間を保障するもので、保険期間は10年、15年、20年等で設定されています。保険期間が限定されているため、一般的に同じ保障内容の場合、終身タイプと比較して契約当初の保険料を抑えられることがポイントです。
一方、更新のたびに保険料が再計算される点には注意が必要です。また商品にもよりますが、保険期間の更新は80歳になるまで等の更新限度があります。
終身タイプは保障が一生涯続くタイプのものです。
一般的に同じ保障内容の場合、契約当初の保険料は定期タイプに比べて終身タイプの方が割高なことが多いです。しかし、定期タイプとは異なり、更新の際の保険料の再計算がないため、保険料は加入時から変わりません。そのため、若いうちに加入しておけば、払込総額は安くなる可能性もあります。
保障が一生涯続くので、高齢になっても保障を受けられる点もポイントのひとつです。
終身タイプの場合、保険料払込期間は基本的に下記の2種類に分けられます。
保険料払込期間によって保険料の払込総額が変わってくるため、それぞれのメリット・デメリットを確認し、自分に合った払込期間を選びましょう。
終身払(全期払)とは、保険料の払込みが一生涯続く払方です。同一保障内容の短期払と比べると保険料は低額であることが多い点がメリットです。
しかし、収入が減る可能性が高い老後も、保険料を払込み続ける必要があります。一定の年齢を超えて契約を継続した場合、保険料払込総額が短期払よりも高くなってしまうことも考えられるため、その点に注意しましょう。
短期払はとは、保険料の払込期間を、60歳までといった年齢や10年といった期間で設定する方法です。
保険料は、終身払(全期払)より高くなるケースがほとんどですが、保険料を払込み終えたあとも保障は一生涯続くため、老後も安心して過ごすことができるでしょう。
保険料の負担を一定の期間で終えた上で、加入する医療保険を生涯継続したい場合には、短期払がおすすめと言えます。
医療保険は、解約返戻金等があるかどうかで、下記の2つに分かれます。
それぞれの特徴を理解してご自身に合ったものを選びましょう。掛け捨て型、積み立て型に関して細かく解説していきます。
一般的に掛け捨て型では、解約返戻金が無いため払込んだ保険料は戻ってきません。生涯健康であれば一度も給付金が支払われない可能性もあります。
その代わりに保険料は同一保障内容の積み立て型に比べ割安で、商品数も掛け捨て型の方が豊富です。そのためご自身に合ったものを探しやすい点はメリットです。
一般的に積み立て型では保険契約を解約した時に、解約返戻金を受け取ることができます。
その代わりに保険料は同一保障内容の掛け捨て型に比べ割高になります。
また、所定の年齢に達した際に、払込んだ主契約の保険料から、入院給付金などとして支払われた給付金を引いた金額が、給付金として返ってくる商品もあります。使わなかった保険料が戻ってくるのは、積み立て型の魅力です。
医療保険には基本的な保障の他に、「特約」と呼ばれるオプションを付けることができ、必要な保障をさらに上乗せすることができます。
特約の種類は様々なものがあるため、今回は代表的な下記の特約を例としてご紹介します。
それぞれの特約に関して解説していきます。
「先進医療」とは厚生労働省によって認められた先進的な医療技術のことです。先進医療にかかる費用は公的医療保険の対象外となり、先進医療に係る費用全額が自己負担です。
医療保険の「先進医療特約」では、先進医療にかかる技術料を、各生命保険会社によって定められている所定の額でカバーすることができます。
なお、先進医療特約で受け取れる給付金には上限があり、通算で500万円~2,000万円が一般的です。治療1回ごとではなく、通算である点に注意しましょう。
出典:(公財)生命保険文化センター ホーム ページ「先進医療特約」
「三大疾病」とはがん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患という、日本人の死因の上位を占める病気のことです。
厚生労働省が発表した「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、三大疾病の死亡総数に占める割合は以下の通りです。
死因 | 死亡総数に占める割合 |
---|---|
がん(悪性新生物) | 24.6% |
心疾患 | 14.8% |
脳血管疾患 | 6.9% |
出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」第6表
三大疾病特約を付加しておくことで、一時金を受け取れる、入院した場合に入院給付金の支払日数が無制限になる等、できるだけ費用に関する心配を減らしながら治療に専念することができます。
「女性疾病特約」は、女性特有の病気になった場合の保障を手厚くするための特約です。
女性特有の病気とは、子宮がんや乳がん、子宮筋腫、子宮内膜症、出産時の帝王切開などが対象です。このような疾病で入院や手術をした場合、主契約の入院給付金や手術給付金に上乗せして給付金が支払われることが一般的です。
また、乳がん治療で乳房を切除したあと、乳房を再建するための手術も保障対象とする商品もあります。
医療保険の保険料は、契約内容と加入した年齢・性別等の様々な要因で決定されます。
医療保険の選び方において、年齢というのは大事な要素のひとつです。若いうちは一般的に病気に罹患するリスクは低いため、保険料も安くなりますが、年齢が上がるにつれ疾病リスクも増えるため保険料も段々と高くなっていきます。
また、ライフステージが変わると、必要となる保障も変わっていきます。これから紹介するそれぞれの年代の選び方を目安に、ご自身のニーズにあった医療保険を選びましょう。
20代は独身の人や、収入が安定していない人が多い年代です。一方で、20代は病気に罹患するリスクが低く、医療保険の保険料も他の年代と比べると安いという点が特徴です。
「これからどんどん働いていこう」という時に、病気やけが等で出費がかさんでしまうと経済的に大きな負担となります。
20代の医療保険は、病気やけがの治療費や、長期間入院等で働けず、収入が減った場合の対策として考えるのが良いでしょう。
30代は、結婚や出産等の様々なライフイベントを経験する人が多い年代です。病気やけがによって長期間の治療や通院が生じると、家族の生活にも影響を及ぼしかねません。
病気やけがに関わる治療や通院で、家計に大きな打撃を受けないよう、保険料をおさえつつしっかりとした保障を選ぶことが重要です。
また、女性のがんの罹患率は下記のように30代から緩やかに上昇していくため、特約を付加して備えておくと安心です。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)年齢階級別罹患率【全がん 2019年】
40代になると病気のリスクが段々と高まっていく傾向があります。
男性は、30代前半での死亡総数に占める三大疾病の割合が約23.6%だったのに対して、40代前半からは約39.5%となっています。
がん(悪性新生物) | 心疾患 | 脳血管疾患 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
男性(30代前半) | 12.1% | 8.5% | 3% | 23.6% |
男性(40代前半) | 17.5% | 13.2% | 8.8% | 39.5% |
出典:e-Stat「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況 5-17死因順位別にみた性・年齢(5歳階級)別死亡数・死亡率(人口10万対)及び割合」
女性は子宮がんや卵巣がん、乳がん等の罹患リスクが、40代からより高まっていきます。特に乳房がんは、30代前半での罹患率(人口10万対)が28.2例なのに対して、40代前半では148.9例と上昇しています。
子宮 | 卵巣 | 乳房 | |
---|---|---|---|
女性(30代前半) | 21.9例 | 10.1例 | 28.2例 |
女性(40代前半) | 48.8例 | 19.5例 | 148.9例 |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)年齢階級別罹患率【子宮 2019年】
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)年齢階級別罹患率【卵巣 2019年】
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)年齢階級別罹患率【乳房 2019年】
40代は収入が安定してくる一方、家庭によっては子どもの養育費やマイホーム費用等の出費もかさむ時期です。もし、この時期に病気やけがで入院を余儀なくされ、働けない状況になれば、収入が減って生活に余裕がなくなる可能性がありますので、病気やけがに備えられる医療保険を検討しましょう。
50代に入るとそろそろ老後について考える人も出てくるのではないでしょうか。
子どもの独立等で出費が落ち着き、ライフスタイルもさらに変化してくる年代です。一方で、病気やけがのリスクが高くなることや、定年を控えて収入が少なくなるなどにも留意しなければなりません。
既に医療保険に加入している人は、ライフスタイルの変化に合わせて、改めて自分や家族の今の生活に合った保障内容になっているか確認してみましょう。
また、加入している医療保険が定期タイプの場合は、更新によって保険料が高額になっていく可能性もあるので、終身タイプへの見直しを検討しても良いでしょう。
60代は退職をして収入は公的年金のみという人も多くなります。
リスクが高くなる病気やけがへの備えを厚くしつつ、保険料は無理のない金額になるように選ぶことが重要です。
子どもが独立し、家族のために入っていた保険を見直すタイミングでもあります。介護保険や認知症に関する保険も検討しても良いかもしれません。持病をお持ちの方は保険に加入出来ないケースもあるため、加入条件もよく確認しましょう。
ご自身や家族の状況の変化に応じて、柔軟に医療保険の見直しを行いましょう。
突然の病気やけがは、誰にでも起こる可能性があります。公的医療保険ではカバーできない分は、民間医療保険で備えておくと良いでしょう。
ご自身に合った保障を選ぶには、どのようなことに備えたいのかを考えることが大切です。
また、最適な保障は家族構成や年代により変化するため、加入後も定期的に見直すようにしましょう。
記事の監修
※保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。各生命保険会社が取扱う保険商品の内容については、各生命保険会社へお問い合わせください。
※社会保険制度の内容については、2024年4月1日現在施行されている制度に基づく内容です。今後の制度改正等によって、内容が変更される場合もあります。
記事の制作:FWD生命保険株式会社
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