「もしものことがあっても、大切な家族の生活はずっと守ってあげたい」そんな思いを持っている方は多いのではないでしょうか。
死亡保険で必要な保障額は一律ではなく、家族の構成やライフステージによって、大きく変化します。この記事では、ご自身に合った保障額を決める際のポイントをお伝えし、あわせて保険の見直しのコツとタイミングについても解説します。
もしもの事が起きた場合、遺された家族にはある程度まとまったお金が必要です。
一般的に貯蓄で用意する場合は目標金額に貯まるまでに年月がかかりますが、保険の場合は、加入した時点(責任開始日)から、契約した保険金額の保障を得ることができます。
例えば、死亡保険の保障額を1,000万円で契約し、被保険者が3年後に亡くなった場合、指定された受取人は1,000万円の保険金を受け取ることができます。
一方で、同じ3年間という期間内で1,000万円を貯めるためには、月々およそ30万円を貯金していく必要があります。月々の生活費の他に、30万円を貯蓄に確保していくことができる世帯は多くないと思われます。
保険に加入していることで、突然やってくる不測の事態に備えることができるでしょう。
実際に死亡保険に加入している方は、死亡保険金額をいくらで設定しているのでしょうか。
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」より、世帯主の年齢別、ライフステージ(家族構成)別での、死亡保険金の全国平均金額を見ていきましょう。
出典:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」を基にFWD生命が作成
世帯全体の「死亡保険金額」を、世帯主の年齢別で見ると、30代から死亡保険の平均金額が増えており、40代後半が約3,000万円近くでピークとなっています。
一方で、50代以降は徐々に死亡保険の平均金額が減っています。一般的に世帯主の年収は年齢とともに増えていくことが多く、さらに子供の独立で教育費などの出費が落ち着いたタイミングで保険金額を減らしていることが考えられます。
出典:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」を基にFWD生命が作成
続いて、家族構成(ライフステージ)別による死亡保険の平均金額を確認してみましょう。保険金額が多いのは「子育て世帯」です。末子(一番下の子)の年齢が低い時に高くなっており、ピークは末子が小・中学生の時です。
ピーク時の保険金額は、世帯主が約2,100万円、配偶者が約900万円と合計で約3,000万円となっています。末子就学終了、つまり教育費の負担が終わったタイミングでピークの半分近くになっており、子どもの成長に合わせて死亡保険の加入を見直ししていることがわかります。
公益財団法人生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に、一般的に「死亡保障はどれくらい必要だと考えられているか」を確認してみましょう。
幅広い世代の男女に「あなたご自身がケガや病気で万一お亡くなりになった場合に、遺族の生活資金の備えとして、いくらぐらいの死亡保険金が必要とお考えですか」と質問したところ、男性は平均で2,247万円、女性は平均で1,145万円が必要だと回答しました。
回答から見ると男性と女性の間で必要とする備えには1,100万円以上の差がありました。ただし実際に加入している死亡保険金額は、男性は1,373 万円、女性は 647万円と、理想とする金額とは大きく差があるようです。
実際に死亡保険の保障額をご自身の場合はいくらに設定するべきか、迷う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、死亡保険の必要保障額の計算方法について解説していきます。
出典:(公財)生命保険文化センター「生命保険に関するQ&A|Q.生命保険の加入金額の目安は?」を基にFWD生命が作成
死亡保険の必要保障額の目安は下記の5つのステップで求めることができます。
項目 | ステップ | 内容 |
---|---|---|
1 | 末子独立までの遺族の生活費の計算をする | 子どもが独立するまでは、現在の生活費のおよそ7割として計算 ・現在の生活費×70%×(末子の独立時年齢-末子の現在年齢) |
2 | 末子独立後の配偶者の生活費の計算をする | 子どもが独立した後の配偶者の生活費は、現在の生活費のおよそ5割で計算 ・現在の生活費×50%×末子独立時の配偶者の平均余命 |
3 | 生活費以外に必要な資金の計算をする | 主な支出に住居費用、教育費用、葬儀の費用などがあり、それぞれ計算して合算 |
4 | 資産および今後の収入見込額の計算をする | 現在保有している金融資産(預貯金、有価証券)、遺族年金(遺族厚生年金・遺族基礎年金等)、死亡退職金・弔慰金、配偶者の給与収入などを合算 |
5 | 最終的な必要保障額の算定をする | ステップ1から3までの必要額の総額から、4の資産と収入を差し引いた不足する分が死亡保険で用意すべき額 |
まずは遺族の生活費や教育費など「必要なお金の総額」を計算し、そこから遺族年金や配偶者の給与など「収入」および「預貯金額」などを差し引いた額が必要な保障額となります。
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、普通死亡保険金額は2,027万円で、年齢別では30代から上がり始め、40代がピークで2,980万円となっています。
また、世帯主年収別では、年収が高くなるほど死亡保険金額も上がっているのが特徴です。年収が300万円から400万円未満の死亡保険金額は、1,040万円ですが、年収1,000万円以上になると3,339万円まで上がります。
出典:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
子どもの有無や、家族構成によっても、必要な死亡保険の保障額は変わってくるため、ご自身に合わせた金額を精査しましょう。
死亡保険金は具体的に何に使うのか、必要なお金の例と標準金額を紹介していきます。全国平均の死亡保険金額がいくらか知ることで、ご自身のケースがイメージしやすくなり、必要な保障額が計算しやすくなるでしょう。
葬儀代や墓代の費用は高額になることが多いため、貯蓄や死亡保険で一括払いできる状態にしておくと安心です。
葬儀費用は約111万円、墓代は平均152.4万円(一般墓の場合)が全国の平均金額です。葬儀は家族葬、一般葬などがあり、参列する人数や祭壇の大きさなどで費用は大きく変わります。
出典:(公財)生命保険文化センター「ひと目でわかる生活設計情報|生活基盤の安定を図る生活設計|葬儀にかかる費用はどれくらい?」
総務省の「2022年(令和4年)家計調査報告」によると、「消費支出(二人以上の世帯)」は、 ひと月あたり約29万円発生します。
内訳は食料費が約8万円、交通・通信費が約4万2,000円、水道・光熱費が約2万5,000円、住居費約1万9,000円などです。住居費の金額が低いのは住宅ローンが消費支出にカウントされないためです。
出典:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2022年(令和4年)平均結果の概要」の「Ⅰ 家計収支の概況(二人以上の世帯)」
賃貸の場合は、この約29万円の生活費に、遺族の住居費を上乗せして考える必要があります。生活費を1人で稼いでいる家計で、その方が亡くなった際は、生活を立て直すまでの間、当面の費用を負担する必要があるでしょう。
配偶者も働いている場合は、生活費の何割をご自身で負担できているか、現状を確認しておくと良いでしょう。
幼稚園から高校卒業までの15年間にかかる教育費の総額は以下の表の通りです。学校に支払うお金だけでなく、教材や習い事などの教育にかかる費用を合算しています。
項目 | 幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
区分 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 | 公立 | 私立 |
費用目安 | 50 | 93 | 212 | 1,000 | 162 | 431 | 154 | 316 |
出典:文部科学省「報道発表|令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します」(2022年12月21日)
公立か私立かで金額が大きくことなっており、すべて公立で約580万円、すべて私立で約1,840万円の教育費用が派生します。
また、高校卒業後は大学や専門学校の進学費用がかかります。子ども1人当たりの入学費用と1年間の在学費用は以下の通りです。
学校 | 専門学校 | 国公立大学 | 私立大学文系 | 私立大学理系 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
費用項目 | 入学費 | 在学費用1年間 | 入学費 | 在学費用1年間 | 入学費 | 在学費用1年間 | 入学費 | 在学費用1年間 |
費用目安 | 50 | 117 | 67 | 104 | 82 | 152 | 89 | 183 |
出典:株式会社日本政策金融公庫「ニュースリリース|子供1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少~令和3年度『教育費負担の実態調査結果』~」(2021年12月20日)
仮に私立大学文系に進む場合、4年間では約690万円、国公立大学で約480万円かかる計算になります。
公立に進学するか私立に進学するかで発生する子どもの教育費も大きく変化します。子どもが私立への進学を希望する場合には、その分の費用を確保しておくとよいでしょう。
世帯別の必要保障額は、子どもの人数と年齢で大きく変わります。
また住居が持ち家か賃貸か、そして配偶者が働いて収入が得ているかも大切なポイントです。さらに現在の資産額および公的年金の加入状況も、必要保障額の計算に影響します。
子どもが未就学児の場合、大学を卒業するまでの教育費は、すべて国公立の学校に通ったとして約1,060万円、すべて私立の文系に通った際は、約2,530万円です。
住宅ローンを利用しており、団体信用生命保険(団信)に加入している場合は、基本的に被保険者が死亡するとローンがゼロになるためその分負担が減ります。
ただし、配偶者がペアローンを組んでいる場合は、配偶者の支払いは続きます。賃貸の場合は、実家に戻るなどができないか確認しておきましょう。
生活費は配偶者の収入と公的年金等でまかなえる場合もあります。不足する場合には、不足分の金額と年数を計算して必要保障額を算出しましょう。
ご自身の葬儀費用などの他に、配偶者が仕事をしていない場合は、再就職までの生活費も考える必要があります。
子どもがいないため、遺族基礎年金は出ませんが、遺族厚生年金は支給要件を満たせば貰えます。ただし、子どものいない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。また、子どものいない夫は、55歳以上である方に限り受給できますが、受給開始は60歳からとなります(ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間であっても遺族厚生年金を受給できます)。
住居が賃貸の場合は、単身者用に住み替えることも想定しましょう。夫婦でペアローンを組んでおり団信に加入している状態であれば、基本的に亡くなった方のローン残高は団信から支払われる保険金で債務弁済され、無くなります。
配偶者のローンは残りますが、その金額分の死亡保険金を掛けておき、全額繰り上げ返済することも可能です。
配偶者や子どもなど扶養家族がいないため、死亡保険金は葬儀費用や遺品整理に使うケースが多く、200〜300万程度の死亡保障を備えておくのがおすすめです。
一方、同居の両親などがおり、ご自身が主たる生計者である場合は、遺族となる両親などの生活費用も考える必要があるでしょう。
必要保障額は、例えば以下のようなライフステージの変化によって変動します。
保険は加入した時のままにせず、過不足が生じていないか、定期的に確認することが大切です。
親が加入してくれていた死亡保険があるなら、必要最低限の葬儀代が確保できているか、保障内容の確認をしておきましょう。
ご自身で保険料を払い込む場合は、保険料の負担がどの程度になるか確認してから加入します。万が一の際に親にいくらか遺したい場合は、おおよその金額を計算しておくと安心です。
ご自身が万が一亡くなった後に、家族が困らないよう備えておくことが大切です。結婚や出産のタイミングに合わせ、必要保障額を見直しましょう。
住宅を購入し住宅ローンを組む際、一般的に「団体信用生命保険(団信)」に加入します。団信は原則、被保険者に万が一のことがあった場合、ローンの残高相当の保険金が支払われるため、ローン負担分がなくなります。その分、死亡保険を見直すと保険料の負担を減らすことができます。
定年退職した後や子どもが独立した後は、夫婦2人だけあるいは1人だけとなります。教育費や子どもの生活費の負担が少なくなるため、保障を考え直すタイミングです。
特に、退職金がある程度出る場合は、預貯金だけで退職後の生活をまかなえる可能性もあります。また、スムーズに配偶者の口座に保険金が入るケースもあるため相続税対策として、死亡保険を残しておく方もいます。
万が一に備えるための死亡保険の金額は、状況によって異なります。ご自身の家族に合った必要保障額を見積もっておきましょう。
そのためには必要保障額を過不足なく計算しておくことが大切です。また家族の成長とともに、保険金額を変えていくことも必要です。
死亡保険は長い人生の中での備えとして役立つでしょう。ご自身や家族のライフスタイルに応じて決めましょう。
記事の監修
※保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。各生命保険会社が取扱う保険商品の内容については、各生命保険会社へお問い合わせください。
※社会保険制度の内容については、2024年3月1日現在施行されている制度に基づく内容です。今後の制度改正等によって、内容が変更される場合もあります。
記事の制作:FWD生命保険株式会社
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