医療保険は、病気やケガで通院したり入院したりするときの費用を保障します。
生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」によると、令和4年の「疾病入院給付金が支払われる生命保険」の加入率は65.7%にのぼります。年齢、保障内容などによって保険料は異なりますが、支払った保険料は生命保険料控除の対象になります。
生命保険料控除とは、所得控除の一つで、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。正しく申告できるよう、上限額や申請方法などを詳しく解説します。
「控除」とは「差し引くこと」を意味します。私たちが支払う税金の額は、それぞれの状況を踏まえて所得から必要な経費や一定の金額を差し引いた「課税所得」をもとに算出されます。
この際、所得から差し引かれる一定の金額のことを「所得控除」と呼び、民間医療保険に支払った年間保険料なども所得控除の対象です。
所得控除には2つの種類があります。
人的控除 | 物的控除 |
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生命保険料控除は物的控除、つまり費用によって適用される控除に該当します。
民間医療保険の保険料は、生命保険料控除の対象となります。年間に支払った保険料の合計金額を算出し、その年にうけた剰余金、割戻金を差し引いた金額が対象です。
注意点は、2010年(平成22年)の法改正で、保険を契約したタイミングによって対象や所得控除適用限度額が変わったことです。2011年(平成23年)12月31日以前に契約した保険契約は「旧契約」、2012年(平成24年)1月1日以降に契約した保険契約は「新契約」と分類されます。
控除区分 | 新契約 | 旧契約 |
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一般生命保険料控除 | 新生命保険料控除 (遺族保障など) |
旧生命保険料控除 (遺族保障・介護保障・医療保障など) |
介護医療保険料控除 | 介護医療保険料控除 (介護保障・医療保障) |
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個人年金保険料控除 | 新個人年金保険料控除 (老後保障) |
旧個人年金保険料控除 (老後保障) |
*控除の対象とならないものもありますのでご注意ください。
医療保険に関しては、旧契約では「旧生命保険料控除」に該当し、新契約では「介護医療保険料控除」に該当します。保険会社から送付される証明書には、新契約か旧契約かが記載されていますので、必ず確認するようにしましょう。
生命保険料控除には、控除額の上限があり、旧契約と新契約では上限額が異なります。
新契約 | 控除額 | 旧契約 | 控除額 |
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新生命保険料控除 | 最高40,000円 | 旧生命保険料控除 | 最高50,000円 |
介護医療保険料控除 | 最高40,000円 | ー | ー |
新個人年金保険料控除 | 最高40,000円 | 旧個人年金保険料控除 | 最高50,000円 |
新契約は、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料とも年間の支払保険料等が80,000円を超えた場合、一律40,000円の控除となります。旧契約では、一般生命保険料、個人年金保険料とも年間の支払保険料等が100,000円を超えた場合、一律50,000円が控除されます。
控除額の計算方法は3種類あります。自分の契約がどの計算方法に該当するのかを確認しましょう。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 支払保険料×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 支払保険料×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
新契約に基づく場合の控除額の計算方法は、上記の表を使用します。年間の支払保険料等は、保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」に記載されているので、新生命保険料控除、介護医療保険料控除、新個人年金保険料控除のそれぞれの控除額を算出しましょう。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円超50,000円以下 | 支払保険料×1/2+12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 支払保険料×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円 |
旧契約に基づく場合の控除額の計算方法は、新契約の控除額や控除区分と分類が異なるので注意が必要です。旧契約では一般の生命保険だけではなく、医療保険、介護保険なども生命保険料となります。旧生命保険料の支払保険料、旧個人年金保険の支払保険料をそれぞれ計算式に当てはめて、控除額を算出しましょう。
新契約と旧契約の両方に加入している場合は、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、控除ごとに以下の3つのいずれかを選ぶことができます。
旧契約と新契約の控除額は、区別して算出するのがポイントです。ただし、所得税の控除額は全体を合計して120,000円が限度となっているので、事前によく確認しておきましょう。
生命保険料控除の申請方法は、年末調整による申請方法と確定申告による申請方法があります。会社員と自営業・フリーランスの場合の申請方法をご紹介します。
会社員の場合は、年末調整の際に、生命保険料控除を受けることを勤務先に申請する必要があります。
勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記載し、保険会社から発行された「生命保険料控除証明書」を添付して提出しましょう。
手続きは基本的には勤務先が行ってくれますが、年収2,000万円を超える方など、諸条件に当てはまる方は、年末調整の対象外となります。年末調整の対象外・また、年末調整を行わない場合は、確定申告でも申告手続きは可能です。保険会社から「生命保険料控除証明書」を電子データで受け取る場合は、勤務先の担当者に提出方法をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
確定申告を行う場合は、原則として2月16日から3月15日までに行われる確定申告で生命保険料控除適用の手続きをします。
確定申告書を用紙で提出する場合は、確定申告書に「生命保険料控除証明書」を添付して税務署の窓口に提出します。「e-Tax」を利用すれば、電子データで提出することが可能です。
なお、e-Taxで提出した場合は、生命保険料控除証明書の添付は不要で、フォームに必要事項を記載するだけで提出できます。
自営業やフリーランスの場合は、毎年確定申告を行います。その際に、医療保険などの支払保険料等を記載することで控除が受けられます。各年度の確定申告時に忘れないようにしましょう。
生命保険料控除は誰でも受けることが可能です。ただし、控除を受けるためには「生命保険料控除証明書」をもとに、手続きを行う必要があります。
民間医療保険は支払保険料等を所得から控除できます。ただし、契約日によって新契約と旧契約に分類されるので、注意が必要です。2011年(平成23年)12月31日以前の契約は旧契約、2012年(平成24年)1月1日以降の契約は新契約です。
控除額の計算式、保険種類が異なるため、保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」で必ず確認してください。
生命保険の控除の仕組みを知って適正な税金額を納めましょう。
記事の監修
※保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。各生命保険会社が取扱う保険商品の内容については、各生命保険会社へお問い合わせください。
※記載の内容は、2024年4月1日現在の税制・関係法令等に基づき税務の取扱等について記載しております。今後、税務の取扱等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。個別の税務の取扱等については(顧問)税理士や所轄の国税局・税務署等にご確認ください。
記事の制作:FWD生命保険株式会社
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