「収入保障保険」は、ご自身に万が一のことが起きた場合や高度障害状態となった際に、家族の今後の生活をサポートする生命保険商品です。お給料のように給付され、遺族の家計を支えます。
収入保障保険で払い込んだ年間の払込保険料は、生命保険料控除として年末調整や確定申告で申告することにより、一定の所得控除を受けることができます。所得税や住民税の負担が軽減されますので忘れずに申告するようにしましょう。
この記事では、収入保障保険の内容やメリット・デメリット、生命保険料控除を受ける方法などについて解説します。
収入保障保険とは、保険期間を定め、期間中に被保険者が死亡または高度障害状態となった時に、毎月一定額の保険金を、年金形式で受け取ることができる死亡保険です。
保険金は保険期間満了時まで受け取り可能ですが、保険期間の経過とともに受取総額が減少します。
なお、保険金の受け取り方法は年金形式以外にも、一時金での受け取りを選択できるものもあります。ただし、一時金で受け取る場合は、年金現価相当額での受取となるため、年金形式よりも受取総額が少なくなるのが一般的です。
収入保障保険には、下記のようなメリットがあります。
収入保障保険では、変化するライフステージに合わせて、必要な保障を柔軟に備えることができます。例えば、子どもを扶養している期間には、生活費や進学費用等子育てにお金が多くかかります。そういった保障が必要な時期には保障を手厚くし、子どもの成長や独立に伴って保障額を減らすことも可能です。
また、保険金を毎月一定額の年金形式で受け取ることができるため、必要な保障額を想定しやすく、計画的な使い方ができるでしょう。大金を一度で受け取ってしまった場合は、浪費してしまう恐れがありますが、毎月定額で受け取れる年金形式なら無駄な出費を防げます。
保険金額の見直しが可能なため、ライフスタイルの変化に対応しながら、適切な保障を確保できるのが収入保障保険の大きな魅力です。
収入保障保険には、加入を検討する前に理解しておきたい下記のデメリットもあります。
収入保障保険は保険料が掛け捨ての定期型の死亡保険のため、解約返戻金や満期保険金がありません。
保険期間の経過に伴い、年金として受け取れる総額は減少していきます。そのため、保険期間満了の直前に死亡や高度障害となってしまった場合、契約初期と比べると僅かな額しか受け取ることができません。
また、収入保障保険に限った話ではありませんが、被保険者が亡くなり、遺族が保険金を受け取る場合には、その金額に対して税金がかかります。 なお、契約者と被保険者、そして受取人が誰であるかによって、税金の種類が異なるので注意しましょう。
収入保障保険の加入を考える際には、メリット・デメリットを考慮して、契約の必要性を慎重に判断する必要があるでしょう。
収入保障保険は年末調整や確定申告の際に「生命保険料控除」として所得控除を受けられます。生命保険料控除には一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類がありますが、収入保障保険はこのうちの一般生命保険料控除に該当します。
年末調整や確定申告で申告できる生命保険料控除額や所得控除を受けるための申告手続き方法を確認しましょう。
収入保障保険の保険料を年末調整などで控除する際には、その契約が「新制度」なのか「旧制度」なのかを判断する必要があります。どちらの制度に該当するかで生命保険料控除の取り扱いが異なるためです。
「新制度」は2012年(平成24年)1月1日以後に契約した保険契約が該当します。一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3種類があり、それぞれ最高で40,000円まで控除可能で、合計で120,000円の控除が可能です。
一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の控除額は、それぞれ以下の表の計算式で算出します。
払込保険料等(年間) | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
20,000円超40,000円以下 | 払込保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超80,000円以下 | 払込保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 払込保険料等にかかわらず一律40,000円 |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)|No.1140 生命保険料控除」
年間の払込保険料等が20,000円以下の場合の控除額は払い込んだ保険料の全額で、80,000円を超える場合は一律40,000円です。「20,000円超40,000円以下」および「40,000円超80,000円以下」の場合は、それぞれ表の計算式で求めた金額が控除金額になります。
「旧制度」は2011年(平成23年)12月31日以前に契約した保険契約が該当します。一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2つがあり、それぞれ最高50,000円まで控除可能です。
一般生命保険料控除・個人年金保険料控除それぞれの控除額は、以下の表の計算式で算出します。
払込保険料等(年間) | 控除額 |
---|---|
25,000円以下 | 払込保険料等の全額 |
25,000円超50,000円以下 | 払込保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円超100,000円以下 | 払込保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円超 | 払込保険料等にかかわらず一律50,000円 |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)「No.1140 生命保険料控除」
年間の払込保険料等が25,000円以下の場合は払込保険料の全額が、100,000円を超える場合は一律50,000円の控除です。「25,000円超50,000以下」および「50,000円超100,000円以下」の場合は、それぞれ上表の計算式で求めます。
新契約と旧契約の両方に加入している場合の控除額は、以下のように取り扱われます。
所得税の控除額は保険の種類ごとに旧制度が最高50,000円、新制度が最高40,000円となっており、3種類で旧制度の最高50,000円を適用できるとすると控除額は合計150,000円となりますが、控除額は全体を合計して120,000円が限度となっていますのでご注意ください。
なお、年末調整の控除額については、今後改正の可能性もあるため、最新の情報は所轄の国税局・税務署にご確認ください。
収入保障保険に払い込んだ保険料の控除手続きは、年末調整で申告手続きする方法と確定申告で申告手続きする方法は異なります。
会社員や公務員などの給与所得者の場合、勤務先で行われる年末調整で申告手続きが可能です。基本的に12月になると勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記載し、「生命保険料控除証明書」を添付して提出します。
収入保障保険は「給与所得者の保険料控除申告書」の中の「一般の生命保険料」に該当し、契約者氏名や保険金等の受取人、払い込んだ保険料の金額などを記入します。新制度と旧制度のどちらに該当するかは「生命保険料控除証明書」に記載されているので、間違えないように確認してください。
なお、年末調整を行わない場合は、確定申告でも申告手続きは可能です。保険会社から「生命保険料控除証明書」を電子データで受け取る場合は、勤務先の担当者に提出方法をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
確定申告を行う場合は、原則として2月16日から3月15日までに行われる確定申告で生命保険料控除適用の手続きをします。
確定申告書を用紙で提出する場合は、確定申告書に「生命保険料控除証明書」を添付して税務署の窓口に提出します。「e-Tax」を利用すれば、電子データで提出することが可能です。
なお、e-Taxで提出した場合は、生命保険料控除証明書の添付は不要で、フォームに必要事項を記載するだけで提出できます。
収入保障保険の年末調整や確定申告をする際には、次の点に注意しましょう。
収入保障保険の保険料控除を受けられるのは契約者とは限らず、保険料を実際に払い込んでいる方です。国税庁ホームページでは、生命保険料控除の対象となる生命保険契約等とは、一定の生命保険契約等で、その保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者またはその配偶者その他の親族とするものをいい、契約者が誰であるかは要件とされていません。と記載されています。
引用:No.1140 生命保険料控除|国税庁 (nta.go.jp)
一般的には契約者=保険料払込人ですが、例えば妻や子どもが契約者となっている保険を夫が払い込んでいる場合は、夫の年末調整や確定申告で申告することになります。
収入保障保険を年の途中で中途解約した場合、それまでに払い込んだ保険料について、年末調整や確定申告の際に控除が受けられます。生命保険会社から生命保険料控除証明書が発行されますので忘れずに申告しましょう。
事情があり年末調整時に収入保障保険の生命保険料控除が申告できなかった時は、確定申告の期間内に申告すれば大丈夫です。
その際、源泉徴収票が必要になるため、勤務先から受け取った後は、紛失しないよう大切に保管しましょう。年末調整に間に合わなかったからといってそのままにしてしまうと、還付金が受け取れなかったり追徴徴収されたりする可能性があります。
収入保障保険は、万が一のことが起きた場合に遺された家族がこれからの生活に困らないために加入する保険商品です。
収入保障保険で払い込んだ保険料は、年末調整の際に生命保険料控除を受けることが可能なため、「給与所得者の保険料控除申告書」に「生命保険料控除証明書」を添付して勤務先に提出しましょう。年末調整で申告できなかった場合は確定申告で申告できます。確定申告書に「生命保険料控除証明書」を添付して税務署の窓口に提出しましょう。「e-Tax」を利用すれば、電子データで提出することも可能です。
記事の監修
※保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。各生命保険会社が取扱う保険商品の内容については、各生命保険会社へお問い合わせください。
※この記事は、2024年4月1日現在の税制・関係法令等に基づく税務の取扱等について記載しております。今後、税務の取扱等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。個別の税務の取扱等については(顧問)税理士や所轄の国税局・税務署にご確認ください。
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記事の制作:FWD生命保険株式会社
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