自分にもしものことがあった際に、遺された家族が経済的に困ることがないよう、死亡保険を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
収入保障保険は、万が一のことがあった際に遺族が保険金を年金のように受け取れるタイプの死亡保険です。給料のように給付され、遺族の家計を支えます。
この記事では、収入保障保険の具体的な特徴やメリットとデメリット、どのような方に向いているのか解説します。合わせて選ぶ際のポイントについてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
収入保障保険とは、保険期間を定め、期間中に被保険者が死亡または高度障害状態になった時に、毎月一定額の保険金を、年金形式で受け取ることができる死亡保険です。
保険期間の経過とともに保険金の受取回数が減少します。このため、保険期間の経過とともに受取総額が減っていくのが、一般的な定期保険との違いです。
基本的に解約返戻金がない商品が多く、保険期間の経過とともに保険金の受取総額が逓減していく仕組みを採用しているため、一般的な定期保険と比較して保険料が割安に設定されています。保険金の受取回数については、年1回や一括等が選択できるものもあります。
死亡保険には保険期間に定めがある「定期型」と一生涯続く「終身型」の2種類があり、収入保障保険は「定期型」の死亡保険のうちの1つです。なお、死亡保険の定期型と終身型の違いは別記事で解説します。
項目 | 収入保障保険 | 就業不能保障保険 | 所得補償保険 |
---|---|---|---|
加入の目的 | 遺族の生活 | 本人の生活(収入減少・治療費) | |
保険期間 | 一定期間(10年間、60歳まで等) | 1~2年のものが多い | |
保険金の支払い条件 | 死亡・高度障害 | けが・病気等で就業出来ない状態 | |
主に取り扱う 保険会社 |
生命保険会社 | 損害保険会社 |
収入保障保険との主な違いは、加入の目的にあります。
収入保障保険は死亡・高度障害の際に「遺族の生活」を保障するのに対し、所得補償保険や就業不能保障保険は、病気やけがで働けなくなった際の「本人の生活」を保障するものです。
所得補償保険は損害保険会社での取り扱いが多い保険商品で、保険期間は1、2年と短いのが特徴です。被保険者が働けない状態となった際に、保険金が支払われます。
就業不能保障保険は、主に生命保険会社で取り扱われている保険商品です。働けない期間が長期化した際に、保険金を継続して受け取ることができます。保険期間は60歳、70歳まで等長期間の設計も可能です。
収入保障保険のメリットには主に以下のようなものがあります。
収入保障保険のメリットは、必要な保障を合理的に準備できることです。多くの保障が必要な時期の保障は手厚く、少ない保障でよい時期は保障が少なくなる仕組みになっています。
また保障額を月額で設定できるので、遺族の家計収支をイメージして、どのように支えるのか想定しやすく、計画的な使い方をサポートできるという特徴があります。
死亡保険に加入する主な目的は、遺族の経済的な負担を減らすことです。
例えば、子どもが小さい間は、食費や光熱費等の生活費や進学費用等子育てにお金がかかりますが、子どもの成長や独立に伴い、必要額は減少します。
収入保障保険は、このようなライフステージの変化に柔軟に対応できる点がメリットです。
保険金の支払事由に該当する事象の発生後、保険期間満了まで継続して年金を受け取ることができるため、必要な時期に必要な額の保障を確保できます。
収入保障保険は、毎月一定額を年金形式で受け取るタイプが一般的です。
保険金の受け取りを月額で設定できるので、必要保障額が想定しやすいという特徴があります。
例えば、遺族の生活費が月額25万円程度になると予想した場合、公的な遺族年金等で月額15万円程確保できる家族では、不足する月額10万円が保険金額の目安となります。保険金が一括で支払われる商品の場合は、月額で必要な保険金額を想定しにくいため、毎月一定額を受け取ることができるタイプの方が利便性は高いでしょう。
死亡保険金を毎月一定額の年金形式で受け取るメリットは、計画的に使用できる点です。
死亡保険金として大金を一度で受け取ると、使いすぎてしまう可能性がありますが、年金形式の受け取りなら、このような事態を防ぐことができます。
なお、基本は毎月受け取りですが、保険商品によっては、一括受け取りや一部をまとまった金額で受け取り、残りを年金形式にできるものがあります。ただし将来、年金で受け取る予定の保険金を繰り上げて受け取ることになるため、年金形式で受け取るよりも総額は低くなります。
収入保障保険のデメリットには主に以下のようなものがあります。
収入保障保険は保険料が掛け捨てとなる定期型の死亡保険です。そのため、途中で解約をしても基本的には解約返戻金がない商品が多いです。
満期保険金もありませんので、保険期間の満了までに、支払事由に該当することがなければ、受け取れるお金はありません。払込んだ保険料は戻ってきませんので、保険料の掛け捨てに抵抗がある場合は避けた方が良いかもしれません。
保険期間の経過とともに、年金として受け取れる総額は減っていきます。
保険期間満了の直前に死亡や高度障害となった場合は、契約初期と比較すると、受け取れるのはわずかな額になります。
なお、収入保障保険には「最低保証期間」があるため、保険期間満了の直前に支払事由に該当した場合でも、保険期間を超えて年金を受け取ることは可能です。ただし、その期間は、一般的に2年や5年等と短いです。なお、最低保証期間の設定は生命保険会社により異なります。
収入保障保険に限らず、被保険者が亡くなって遺族が保険金を受け取る場合、その金額に対して税金がかかります。
契約者と被保険者、そして受取人が誰であるかによって、税金の種類が以下の通り変わります。
契約形態 | 契約例 | 課税の種類 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
契約者 | 被保険者 | 遺族年金受取人 | 被保険者死亡による受給権取得時 | 毎月の 受取時 |
一括で受け取った場合 | |
契約者と被保険者が同一人 | 本人 | 本人 | 配偶者 | 相続税*¹(遺族年金の税法上の評価額に対して課税) | 所得税 (雑所得)*² |
相続税 |
契約者と受取人が同一人 | 本人 | 配偶者 | 本人 | ー | 所得税 (雑所得) |
所得税 (一時所得) |
契約者、被保険者、受取人がそれぞれ別人 | 本人 | 配偶者 | 子 | 贈与税(遺族年金の税法上の評価額に対して課税) | 所得税 (雑所得)*² |
贈与税 |
*1 遺族年金の受取人が相続人(相続を放棄した人、相続権を失った人を除く)の場合、「500万円×法定相続人の数」までの金額が相続税の非課税限度額となります。
*2 各年の年金収入金額を所得税の課税部分と非課税部分に振り分け、課税部分について雑所得として所得税が課税されます。なお、年金支給初年の所得税は全額非課税となります。
なお、高度障害年金として、本人または配偶者等が受け取る場合は、原則として全額非課税になります。
収入保障保険はライフステージの変化への対応に適しており、原則保険期間が満了になるまで、毎月一定額の保険金が給付されます。
ここからは、収入保障保険がどのような方におすすめなのかを、公的な遺族年金の仕組みも踏まえて、具体例を用いて解説します。
小さな子どもを育てている世帯は、生活費や住宅費に加え、将来の教育費負担が発生する状況です。
働いている方が亡くなった場合は、収入が減ります。そして、日頃育児を担っている方に万が一のことが起こった場合は、配偶者等の家族が家事や育児を負担することになるでしょう。
家事や育児への負担が増えて、働ける時間が短くなると、これまでの収入を確保することが難しくなるかもしれません。
充分な預金がない場合は、共働きかどうかにかかわらず、夫婦ともに子どもが成長するまで、収入保障保険で備えておくと安心です。
日本に住んでいる20歳から60歳までの方は国民年金(基礎年金)に加入します。会社等に勤めている方は、会社を通じて厚生年金保険や共済組合に加入し、国民年金に必要な負担をしています。
万が一のことが起きてしまった際には、個人事業主やフリーランス等の自営業の方の場合は、遺族基礎年金を受け取ることができます。一方、会社員や公務員の方の場合は遺族基礎年金に加えて、遺族厚生年金も受け取ることができます。
個人事業主およびフリーランス等の方は、会社員等の方と比較すると、公的な遺族年金の額は少なくなる場合が多いため、民間の保険で保障を用意しておく必要性がより高いといえます。
収入保障保険を選ぶ際に大切なポイントは主に3つあります。
まずは必要な保険金の額を検討し、次に必要な保険期間を決めます。そして保険金の貰い方について、しっかりと検討しましょう。それぞれ具体的に説明していきます。
家族の人数や年齢、および配偶者の収入や現在の貯蓄により、必要保障額は違います。各家庭で必要な金額を計算しましょう。計算には、一般的に「必要保障額積み上げ方式」が使われます。
まずは子どもが独立するまでの遺族の生活費を現在の7割、子どもが独立した後の配偶者の生活費を現在の5割とし、それぞれ必要な年数を掛けて、生活費の総額を出してみましょう。
生活費以外に子どもの教育資金や住居費用(持ち家か賃貸かで異なる)等がかかります。これらの総額から、遺族年金や配偶者の収入等、遺族の収入見込みを差し引き、さらにその中から貯蓄で賄える分を引くことで、遺族が必要な保障額が算出できます。
保険期間は一般的に「被保険者本人が定年退職するまで」とする方が多いですが、家族の状況を考慮して、設定するのがおすすめです。
例えば、高齢での出産をされた方は「末の子が大学卒業するまで」とし、年が離れているご夫婦の場合は「年齢が若いほうの配偶者の老齢基礎年金の支給開始まで」といった期間設定も考えられます。
各家庭で自分たちに必要な保険期間を話し合いながら決めましょう。
収入保障保険は、万が一の事態があった時、その後の生活を支えることに適した保険ですが、葬儀費用や大学の入学費用等まとまったお金に対する準備には対応できません。
加えて、保険期間の経過とともに保険金は減少していきます。保険会社によっては、一括で受け取れるものもありますが、一般的に受け取れる金額は年金形式で受け取る場合よりも少なくなります。
万が一の時に一時金として大きな金額を受け取りたい場合は、定期型の死亡保険や終身型の死亡保険等、いつ受け取っても同額の保険金が受け取れるタイプを検討しましょう。
収入保障保険は、もしものことが起きた時、遺された家族の生活を支えるためのものです。貯蓄や公的遺族年金では足りない分をカバーする目的で加入します。公的な遺族年金の支給は2ヵ月に1回であるため、毎月支給される収入保障保険は心理的な負担を軽減できる点もポイントです。
必要な保障額は家族のライフステージによって変化するため、どのくらいの保障がいつまで必要なのかをしっかり把握してから加入を検討しましょう。
記事の監修
※保険商品の内容は、一般的と考えられる内容です。各生命保険会社が取扱う保険商品の内容については、各生命保険会社へお問い合わせください。
※この記事は、2023年12月1日現在の税制・関係法令等に基づく税務の取扱等について記載しております。今後、税務の取扱等が変わる場合もございますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。個別の税務の取扱等については(顧問)税理士や所轄の税務署等にご確認ください。
※社会保険制度の内容については、2023年12月1日現在施行されている制度に基づく内容です。今後の制度改正等によって、内容が変更される場合もあります。
記事の制作:FWD生命保険株式会社
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